気象予報士試験合格を目指して、いざ自分で天気図を描くとなると、最も不安になる要素が前線です。高気圧や低気圧は等圧線によって大まかな位置が示されていますが、等温線や等相当温位線の集中帯、降水域などをもとに前線をどこにどう描くかは、ずいぶん感覚的なことに思われます。
これは天気の仕事をしているときも同様で、前線がどのようにひかれているかは、ついしげしげと眺めてしまいます。すると、前線は画一的ではなく、個性豊かで、一瞬面食らうような描かれ方をしているときもあることに気が付きます。
下の天気図では、日本海にある低気圧から延びる前線が非常に短く描かれています。とくに温暖前線は200kmくらいしかなく、かまぼこ型の温暖前線マークがひとつかけるかどうかという短さです。
こんなに短い前線が描かれるのは非常に珍しいことだと思います。前線はあまりに短い時には解析しない場合が多いので、前線として解析できる下限なのではないでしょうか。
さらに次の天気図では、それぞれの前線はきちんと描かれているのに、なんだか変に見えてしまう部分があります。日本のはるか東にある低気圧から延びる寒冷前線と、東経149度の低気圧から延びる温暖前線、つながりが悪いと思いませんか。
寒冷前線は緩やかなカーブが続いているのに、温暖前線のほうは直線的につながっています。個人的には温暖前線を少し反らせて、屈曲点を滑らかにつなぎたい思いに駆られますが、もしかしたら付近の船舶からそうはさせない情報が送られているのかもしれません。
ここまでは前線の描き方の例ですが、おそらく前線を作画するためのシステムが思わぬ味わいを加える例があります。例えば次のような停滞前線は、梅雨時のように連日前線が登場する期間にときどきみかけます。
違和感の「もと」がわかりますか?停滞前線のマークが通常より細かく描かれ、個数もかなり増えています。詳しい仕組みはわかりませんが、出力するときにうっかり縮尺をいじってしまったのでしょうか。
最後は、ともすれば不体裁なのではないかという天気図。下の天気図では、日本海にある低気圧から前線が延びています。ところが一体どうしたのでしょうか。寒冷前線のマークの間隔から推察すると、佐渡島の北あたりにあるはずの寒冷前線マークがひとつかけてしまっているように見えます。
さすがにこのような抜けがある天気図は珍しいだけに、見つけたときには「あっ」と声が出ました。